単声書簡

個人という灯台から

アニェス・メロン Agnès Mellon

アニェス・メロン(Agnès Mellon)は古楽復興の草創期、エマ・カークビー(Emma Kirkby)らと共に活躍したソプラノ。

自分の最も好きなフォーレ〈レクイエム〉のピエ・イエズの録音は、このアニェス・メロンによるものである。

 

彼女が来日したコンサートのレビューには、「声量が足りない」という声がよく見られる。来日当時の年齢のこともあるだろう。
同じソプラノでいえば、先日紹介したロベルタ・マメリ(Roberta Mameli)であったり、 

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ヌリア・リアル(Nuria Rial)、新星エメケ・バラート(Emőke Baráth)など、強い声を持つ歌手が古楽界に続々と進出しており、彼女たちの声に耳が慣れると、確かにメロンの声は物足りない。
また、大きなコンサートホールで演奏される機会も増え、古楽は繊細な声で歌うものではないという時代の流れは確かに存在する。その流れは、古楽歌唱法、バロック声楽などといわれた“弱い声(というイメージ)”への反発から生まれたのかもしれない。
録音に関していえば、CDプレイヤーで聴くのも、イヤホンを通して聴くのも、我々の聴く音楽は音量のつまみを自由に上げられる。いつの間にか大きな音に、耳の/精神の照準が合ってしまっているのだ。

 


Fauré Pie Jesu Mellon Herreweghe

それでも、いや、私はそんな時代に耳が疲弊しているのかもしれない。楽器と溶け合うメロンの声が好きなのだ。
透明で美しい、清らなる彼女の祈りが。