単声書簡

個人という灯台から

悲しき歌 Chanson triste

Chanson triste
                           Jean Lahor

Dans ton coeur dort un clair de lune,
Un doux clair de lune d'été,
Et pour fuir la vie importune,
Je me noierai dans ta clarté.

J'oublierai les douleurs passées,
Mon amour,quand tu berceras
Mon triste coeur et mes pensées
Dans le calme aimant de tes bras.

Tu prendras ma tête malade,
Oh! quelquefois,sur tes genoux,
Et lui diras une ballade
Qui semblera parler de nous;

Et dans tes yeux pleins de tristesse,
Dans tes yeux alors je boirai
Tant de baisers et de tendresses
Que peut-être je guérirai.



〈訳詩〉


悲しき歌
                    ジャン・ラオール


きみの心に眠る月明かり
やさしい夏の月明かり
生きるわずらわしさから逃れて
きみの光に溺れよう

過ぎた苦しみは忘れられる
恋人よ きみが癒してくれるとき
この悲しみと物思いは
きみの腕の  静けさに抱かれる

この病んだ頭を腕に抱いて
そう  ときどきは  膝の上に寝かせ
きみは昔の歌を歌ってくれる
わたしたちのことを語っているような

悲しみに満ちたきみの眼から
きみの眼から わたしは飲む
幾たびものくちづけ たくさんのやさしさ
それできっと 癒されるだろう 


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ジャン・ラオールの詩で、アンリ・デュパルク(Henri Duparc)の曲が最もよく知られる。彼の最初期の作品で、20歳の時に作られた。

季節を歌った詩ではないものの、夏の日の詩だと分かる。
のきんと冴えた白い月というより、高度の低い、あのまろやかな月。
俳句には、 夏の月 という季語に、 月凉し という副題がある。
炎天のなかで病める身と心に、おだやかな夜は嬉しい。


RARE! LIVE IN 1961 Nicolai Gedda sings CHANSON TRISTE by Duparc

今年2017年の1月に亡くなったテノール、ニコライ・ゲッダの録音。
デュパルクの他の多くの歌曲がそうであるように、〈悲しき歌〉も高声用が原調で、
テノールに歌われることを想定していると思われる。
楽譜を見ると、速度の指示や強弱の指示がけっこう細かい。
表現を演奏者に委ねるタイプの作曲家もいるが、彼は演奏してほしい音楽のヴィジョンが明確にあった人なのだろう。